2.1.2 光質について

(1)赤色光と青色光                                                                                                      赤色LEDの光を当てると光合成が盛んになって成長が早くなる。しかし、赤色だけで植物が育つわけではなく、発芽には波長450ナノメートル前後の光も必要で、両方を使うことで植物は効率よく育つ。

(2)青色光は気孔を開口する。

孔辺細胞に青色光(390nm-500nm)が照射させると、ATPのエネルギーを利用して水素イオンを輸送する細胞膜ポンプが活性化される。水素イオンを細胞外に能動輸送すると、膜電位が過分極する。次いで、同じく細胞膜にあるカリウムチャネルが過分極に応答して開き、孔辺細胞にカリウムイオンが取り込まれる。孔辺細胞の浸透圧が高まり、水が吸収され孔辺細胞の体積が増え、気孔が開口する。

(3)リーフレタスでは青色光下で、葉柄長の割合が著しく小さくなる。葉柄を短く太くすることで葉身を立ち上がらせ、上方からの効率良い受光を可能にする。リーフレタスの葉柄は柔らかく、葉柄が長くなると葉身が垂れ下がり、受光効率が低下する。

(4)緑色光

森林などで葉が重なりあう場合を考えると、緑色光が葉を透過して影になっている葉に届き、その葉で光合成を行わせ葉を育てる。そして、環境は固定していないので、ギャップが出来て光が当たり光エネルギーを利用できる方が、全体最適に適っている

(5)光合成に関与しない光にも役割はある。

1)赤外線(波長:0.7μm以上)にはエマーソン効果により、光合成を促進させる効果がある。ただし1.0μm以上では熱作用があるので有害。

2)紫外線(波長の短い400 nmから100 nmまで)

紫外線は光合成には利用できず、逆に光合成を阻害し葉緑体に障害を与えるが、紫外線による障害を抑えるために植物は葉の表皮細胞に紫外線をよく吸収するフラボノイドを合成し、太陽光の紫外線が葉緑体などに吸収されないようにしている。ビタミンCやカロテンの含有量を高める働きがある。

 

<補足説明>

(1)同じ個体の複数の葉間での「日影にする葉」「日影にされる葉」の関係を、『相互被(そうごひ)陰(いん)』という。植物は特定の1枚の葉が最適な環境に到達すれば良いわけでは無く、相互被陰を小さくし、光合成生産物をどれだけ上げるかで、個体の成長量は決まる。

部分最適ではなく全体最適である。                         

栽培パネルに植えた野菜の全重量を高めなければ、植物工場事業は成り立たない。

 

(2)光とは、光は波としての性質と、粒子としての性質を同時に併せ持っている。ポイントは光量子の数であり、光源からの距離ではない。

1)光の一粒を光子(光量子)といい、ある物質(葉など)に光があたる場合、1秒間 に照射される光子の数をその物質の受光面積で割った値が光量子束密度という。

2)光の強さは光源からの距離の2乗に反比例するが、「エネルギー保存の法則」により、粒子は無くならない。距離が長いと、光量子束密度が減る事になる。

3)光源から放射される流束の線の数の合計は距離に対して一定である。光源からの距離が一定である球面を想定すると、光源から出た光は直進するため、全てがこの球面を通過する。どんな直径の球面を想定しても、その球面を通過する光の量は等しい。球の表面積は半径の2乗に比例するので、光の強さは光源からの距離の2乗に反比例する。

4)光合成に必要なのは光量子数で、赤外光が来ても紫外光が来ても、光量子1個は1個である。光化学反応は、色素が吸収できる光子が来た時に引き起こされる。