事例36:養液調整のダウン液(酸液)が大量に投入され、成長が遅れた。

1.何が起こったのか

人工光型植物工場型では、pH調整は管理機で自動調整されるのが一般的である。    養液中の硝酸塩などのインイオンは多く吸収されアルカリ側にシフトするため、ダウン液(酸性)は一定量ずつ補給される。通常は大量に補給されることは無い。

養液にpH調整液のうちダウン液(酸液)が大量に補給され、生育が遅れ、背丈は伸びなかった。

 

2.原因は何であったのか。

(1)管理機の機械的なトラブルが原因であることが多い。センサー部分に養液の結晶や水道水のシリカ成分の結晶が付着し、pHを正確に感知できなくなった。  

(2)酸障害により、根にダメージを受けて成長が遅れた。

1)水素イオンが多いと、細胞壁の繊維と繊維の間をつないでいるカルシウムの橋を切る。ペクチンカルシウムの架橋が外れ、ゲル化が崩れることで細胞壁が弛緩(しかん)される。

2)強制的な長時間の酸処理により細胞壁が大幅に緩んでしまうと、細胞内からの急速に溶質流失が生じ、根の細胞は壊死していく。

 

 

写真2-16 酸障害の根       

 

3.対策方法と目標到達点

《目標到達点:機械的なトラブルを無くす。》

(1)機器のトラブル

定期的に点検を実施する。センサーは定期的に交換する。

(2)pHの確認は、ハンディタイプのpH計でも確認する。ダブルチェックする。

(3)養液更新する。

(4)管理機の修理を行う。修理が完了するまで、管理機の電源は落とす。

養液更新後1~2週間であれば、養液は管理値の範囲に収まる。