3.4 光阻害のメカニズム

3.4.1 過剰エネルギー説

葉が受けた光エネルギーのうち、光合成や熱放散等で消費し切れない過剰な光エネルギーがダメージを引き起こす。

光エネルギーは光合成暗反応で炭水化物合成、光呼吸、熱放散などで消費される。

強光や連続光下において光呼吸速度が増大するが、光呼吸によって消去されない余剰の光エネルギーが葉緑体に存在すると、葉緑体でO2発生量が増加し,それを消去するためにSOD活性(O2-をH2O2 に代謝する)活性を増大させるが、SOD 活性を増大させても処理しきれない量でO2- が発生するため、光障害の発生になる。さらに、維管束に障害が生じる為、カルシウム供給が妨げられチップバーンが発生する。

3.4.2 マンガンクラスター説

光エネルギーが水を分解しで酸素を発生する。明反応の光化学系Ⅱに結合したマンガンクラスターで行われる。 2HO→O↑+4H+4e-

(1)マンガンイオンは光によって励起されると遊離し、マンガンクラスターはある確率で壊れ、酸素発生系が機能を失う。光量子数にのみ依存する。

(2)光阻害が起こる速度と光強度(強光だと光量子数は多い)の関係は比例し、光阻害速度と光合成速度は無関係である。

 

(3)マンガンは紫外線域に極大吸収波長が有る。青色から赤色に欠けて吸光度が低下していくため、青色、緑色、赤色の順に光阻害が大きくなる。

(4)マンガン不足で、光阻害が生じ易くなり、チップバーン様の障害が若芽から発生する。

 

 

図3-5 マンガンクラスター

(説明)細胞膜を介した濃度勾配に従い【H】が流れ、ATP合成酵素の膜に埋まっているF0モーターを回す。F0モーターがFモーターを機械的に回すことで、ADPと無機リン酸を結合させ、エネルギー源であるATP生産する。