1.何が起こったのか
成長が良いレタスで、茎部にクラックが入り、ひどくなると赤褐色が広がった。
写真2-24 クラックの入った葉
2.原因は何であったのか。 (参照:第3章 1.レタスの褐変)
(1)養液温度と栽培温度
育苗期の養液温度や栽培温度が高温になると、細胞間隙が生じやすくなる。
養液温度が高いと、間隙の周辺細胞の分裂抑制とリグニン化を促進する。間隙に柔細胞が満たされず、間隙は空洞として発達する。破生細胞間隙となる。破生細胞間隙の中に、大型の細胞が増殖・侵入する前に、葉や茎部の伸長が進むので、葉部や茎部の保持力が不足となる。(破生細胞間隙:周囲の細胞の成長など他動的な要因で崩壊した細胞間隙)
(2)定植時のパネル移動に苗に縦方向の物理的な力を与えている事がある。最初の間隙形成要因は物理的力による細胞破壊である。
(3)低酸素
酸素欠乏によりエチレンが多量に発生し、エチレンの生成により葉柄の上偏成長(葉柄が下に垂れる)、葉の黄化、根の伸長阻害などが生じる。葉柄が反る形で成長し葉柄が下に垂れる。なお、水温(養液水温)が高くなると、水中の溶存酸素量は減少し、高温になるにつれ根の酸素要求量は増加するので、酸素欠乏を生じ易い。
(4)塩酸(微酸性電解水生成機のトラブル等が原因で) 微酸性電解水のpHは6前後であるが、原料の塩酸が漏れ等により、pH4位に低下する場合がある。H+濃度はpH4ではpH6の場合の100倍になり、植物細胞の細胞壁を充填しているペクチンカルシウムなどを溶かし、細胞壁が柔軟になる。更に植物細胞どうしを接着しているペクチンなども溶かして、細胞をバラバラにする。
(5)カリウム欠乏
低カリウム野菜を栽培する場合、養液中のカリウム濃度を下げ、栽培する。
1)カリウムは炭水化物の蓄積量を高め、細胞膜を厚くして細胞の膨圧を保ち、茎や葉を強健にする働きがある。
2)細胞壁を構成するセルロースやヘミセルロース、ペクチン(壁と壁とを接着役目を果たす)が、作られなくなる。その結果、植物が軟弱になる。
(6)外葉が自重でたわみ、乳管細胞が破裂して裂け口が褐変する。さらに、乳管が破裂して、赤色褐変部が広がる。
3.対策方法と目標到達点
《目標到達点:クラックを少なくする。》
(1)養液温度と栽培温度を規定値で管理する。
(2)養液中のカリウム濃度を高める。
(3)仮植、定植時の栽培パネルのハンドリングを乱暴に扱わない。
(4)クラック発生の葉は、トリミングして取り除く。