1.何が起こったのか。(参照:第3章9.2 電気的中性の原理(pHが変化するメカニズム))
通常、養液のpHは上昇していき、栽培途中で低下することはほとんど無い。
養液のpHが4.5以下、特に㏗が4.0以下まで低下すると、カルシウム等が不溶化し、いわゆる酸害が生じた。必須元素不足で生育障害を引き起こした。
2.原因は何であったのか。
(1)クロラミンにより根が壊死し、微生物の作用で酸敗した。(参照:事例31)
(2)切れた根や滑落した表皮細胞等は、微生物により分解される(腐敗)。腐敗して酸っぱくなることを酸敗と呼び、酸が生産されてpHが低下した。
例えば、米飯はでん粉質が主成分で水分含量が高く、酸生成による異臭現象を生じやすい。20~30℃の温度で米飯を保存すると、すえた臭いが出て、pHが低下するようになり食べられなくなるが、さらに変敗が進行すると糸を引くようになり、米粒が軟化、溶解することは経験的によく知られている。
(3)養液中の微生物が増殖していた。
養液循環の配管や栽培途中に菌叢があった。
(4)管理機センサーのトラブルで、ダウン液(リン酸系の酸性養液)が多量に注入された。
3.対策方法と目標到達点
《目標到達点:pHは5.0以上、望ましくは5.5~6.5で管理する。》
(1)水道水のpHを確認する。
根が壊死すると微生物により変敗して有機酸が生産される。pHを自動調整で管理している場合、養液の㏗値が規定になるまで、アップ液が注入されるので、表示されているpH値だけで管理すると、見落すことがある。アップ液、ダウン液の使用量も確認する。
(2)養液は半量ずつ、更新期間も半分にする。
この対応で、根が壊死することは無くなった。
(3)養液中に浮遊する切れた根は、養液タンクに戻すのではなく、除去すること。フィルターを取り付けると良い。
(4)管理機のセンサーは経年的に劣化する。養液のpH、EC値、NO3-、K+、Ca2+については、簡易センサーなどで、ダブルチェックする。