事例34:養液更新すると根が餓死し、その後1週間程度で新根が発根した。

1.何が起こったのか

仮植ラインの養液更新を水道水で全量を更新した。1週間ほどアップ液(アルカリ液)が入り、しかも根の中央部が壊死し、褐変した。その後、新根が成長した。

通常、アップ液が入ることはほとんどない。

 

<採取直後の水道水で養液調整>

・pH 7.6

・養液中NH3:24ppm

 

 

 

写真2-15 クロラミンによる根の障害

 

2.原因は何であったのか。(参照 第3章 12.水道水の使用)

クロラミンが原因と考えられる。

(1)クロラミンは、水道水がアルカリ側で、水道中の次亜塩素酸の存在とアンモニウムイオンの存在により発生する。根部褐変は次亜塩素酸とアンモニウムイオンにより生成されるクロラミンにより生ずるものと考えられる。

次亜塩素酸が消費されると、クロラミンの発生はなく、根は正常には発育した。

(参考)1.水道水質基準 水道水質基準 5.8~8.6

2.取水地の水質の変化に応じて変化する。特に春と秋、水温変化の激しい時期は変化が大きい。

(2)細胞壁は厚く丈夫な構造体であるが、苗の幼根は軟弱であり、かつ細胞のガスパリー線の発達が未熟である為と考えられる。

(3)水道水とクロラミン

水道水の消毒は水道法の規定により塩素によるものとなっており、その塩素消毒剤として次亜塩素酸ナトリウムが主として使用されている。 NH3+ NaCLO→NH2CL+NaOH    モノクロラミンはアルカリ条件下で、次亜塩素酸ナトリウムとアンモニアの反応で生じる。俗にいう“水臭”がする場合は疑う。

(4)アンモニアを含む養液にクロラミンを加えると塩化シアン(毒性物質)が生じる。

 

3.対策方法と目標到達点

《目標到達点:壊死の発生をゼロにする》

 養液更新を養液タンク容量の半量を2回に分け行うことで、防げた。