5.養液に関するトラブル 事例29:養液更新を長期行わないと生長障害が見られた。

1.何が起こったのか

養液更新が遅れると、生育不良やクロロシス等の障害が発生した。

露地栽培での連作障害と同様の障害と考えられる。養液栽培では連作障害は発生しないと言われるが、養液更新することで回避している。

 

2.原因は何であったのか。

(1)多量成分や微量成分のバランス

養液の成分組成は吸収される成分量により変化していく。多量成分や微量成分のバランスが許容範囲を逸脱すると、成長に影響が生じる。

培養液はECやpHにより管理が行われ、通常は追肥やpH調整剤を投入して恒常性を維持している。しかし栽培が長くなると特定の養分の過不足が生じて養分のバランスが崩れる場合があり、培養液の更新が必要となる。

(2)アレロパシー

アレロパシーとして他の植物の成長を抑制する物質を根から放出し、他の植物の成長を抑制するが、この物質の濃度が高まることにより、作物自身の生育に悪影響を与えてしまう場合がある(自家中毒:アレロパシー)。レタスの場合はバニリン酸との報告もある。

自家中毒とは植物の根から滲出する化学物質が、生育抑制物質として自根での養分吸収阻害を起こし、植物の生育を抑制する。

(3)根の腐敗によって生じる有機酸が養液中へ蓄積し、栽培作物に障害が発生した場合には培養液の更新が必要となる。

 

3.対策方法と目標到達点

  《目標到達点:発生ゼロ》

(1)植物の生育抑制・収量低下などの予防するために、培養液は一定期間で廃棄し更新する。微量成分欠乏対策と連作障害対策のためおこなう。

(2)養液タンクの全量を一度に更新するのではなく、半量ずつ期間を半分にして更新する。

  使用する水の影響を軽減することができる。<参考:第3章 12.3 クロラミン>