事例21:播種・育苗用養液に、水道水のみ使用すると育成が遅れた。

1.何が起こったのか

発芽・育苗に高栄養の養液を使用すると生育は良い。しかし、発芽養液に水道水を使用し、育苗には育苗用養液を使用したが、成長は遅れた。

 

2.原因は何であったのか。

(1)発芽に栄養分を供給する必要はなく、種子の持っている栄養分で発芽する。

しかし、レタス類の種子は小さく貯蔵されている養分は少なく、発芽後の育苗には、栄養不足になる。成長を促進させるには、ルビスコ量を増やす必要がある。

養液中の硝酸態窒素濃度が低いと葉中の光合成系タンパク質(ルビスコ)量が少なく、高濃度だとルビスコ量が増える。ルビスコはタンパク質であり窒素が基質となるので、硝酸態窒素濃度が高い方が、ルビスコ量が増えることになる。

(2)水道水を使用し発芽させた後に、ウレタンに吸収されている水分を全て養液に入れ替える事は難しい。ウレタン中の清水を全て抜くことは出来ないので、養液を追加しても所定の濃度に、直ぐにはならない。(参照 事例14:通常の栽培日数で、成長が遅れた。)

(3)水道水のpH変動は大きい。緩衝するイオンが少なく、藻が生えてくるとpHはアルカリ側にシフトする。(第3章 9.2 電気的中性の原理(pHが変化するメカニズム))

 

3.対策方法と目標到達点

《目標到達点:苗の生育を従来とおりにする。》

(1)発芽・育苗養液は高栄養状態で生育する。

ウレタン内部の養液を入れ替え作業は生産現場では難しいので、良い苗の生産には高栄養が必須である。

(2)養液pHを酸性に保つ。ダウン液で調整するか、養液を更新する。

養液に光があたるので、藻が発生しやすい。播種後4~5日で藻の発生が進んでくると、pHが上がってくる。pH7以上になると、根の発育が阻害される。