2.成長速度に関連するトラブル 事例15:育苗期が小ぶりで、生育状態が悪くなった

1.何が起こったのか

 育苗用養液のpHが上昇し、pH 8程度のアルカリ性になっていた。

 根端が褐変し、根毛が観られなかった。

 

2.原因は何であったのか。(参照:第3章 9.2 電気的中性の原理)

(1)pHが上昇した要因

水中のプラスの電荷を持つイオンとマイナスの電荷を持つイオンの合計は等しい。

1)養液水の「+」の電荷をもつ陽イオン

:ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(k)、アンモニウムイオン(NH4)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、水素イオン(H+)等が含まれている。

2)養液水の「-」の電荷を持つ陰イオン

:塩化物イオン(Cl)、硝酸イオン(NO3)、硫酸イオン(SO)など。

3)陽イオンの合計と陰イオンの合計は常に等しいので、硝酸イオン(NO3)や 塩化物イオン(Cl)が根から吸収され減少すると、水素イオン(H+)も減少する。

その結果、pHは上昇する。逆に、陰イオンの量が増加すると、水素イオン(H+)が陽イオンの不足を補い増加するので、酸性となる。

(2)発芽後1週間程度でアオコの発生が多くなる。それに伴い、pHも上昇する。

 1)養液pHは8.0以上になり、根端は褐変化し根は伸長が停滞した。

2)根毛の発育は見られず、養水分の吸収が低下した。

養水分の吸収が低下したため、成長が遅れた。

 

 

写真:2-8 アルカリ性養液中の根端

 3.対策方法と目標到達点 《目標到達点:養液をアルカリ性にしない管理をする。》

 養液pHを毎日確認し、pH7以上になったら、養液を交換する。