事例14:アオコが多発すると養液のpHが上昇し、苗の生育が悪くなった。

1.何が起こったのか

 発芽・育苗工程でアオコが多発すると、養液のpHがアルカリにシフトし、苗の生育が悪くなった。 (参照 事例13:アオコの多発で、苗の先部にチップバーンが生じた。)

 

2.原因は何であったのか。

(1)藻から分泌される高粘性多糖類によって養液が高粘度になる。根の周囲に付着して根の酸素吸収や養分吸収を阻害し、根の発育を抑制する。多量の発生に注意が必要である。

(2)養液pHは上昇する。養液pH7以上になる場合は養液を更新または調整する。

(参照 第3章 9.2 電気的中性の原理(pHが変化するメカニズム))

(3)アルカリ性養液中で根はダメージを受ける。伸長が阻害され、根は褐変し壊死する。植物の細胞壁は主成分がペクチンとセルロース、ヘミセルロースで作られている。

ペクチンとヘミセルロースはアルカリ可溶成分であり、細胞壁の細胞間隙は大きくなる。

細胞壁の内側にある細胞膜の主成分は、たんぱく質とリン脂質でタンパク質や脂質は、アルカリ性養液中で変性する。特に細胞分裂の盛んな根端分裂組織(根の先端部)がダメージを受けやすく、根端の褐変が初めに見られるようになる(参照 事例15)

(4)日長時間が長い、照度が大きいなどの要因で光量が多くなり、アオコの生育を速めた。

  栽培パネルは白色であり、反射光が多い。日長時間を短縮しても、光量は確保できる。

 

3.対策方法と目標到達点

《目標到達点:チップバーン発生をゼロにする》

(1)育苗の養液調整

  アオコの発生は避けられない。養液はタンクに循環されるので、養液全体の緑色化が進む。緑色が濃くなったら養液を更新する。養液の調整方法を掲示し確実に調整出来る様にする。

(2)pH調整を確実に実施する。

(3)日長時間を短くする。<明期:暗期=6時間:6時間>で苗の生育は良好であった。