事例8:日長条件延長および栽培室温度上昇でチップバーンが多発した。

1.何が起こったのか
 日長時間の延長やエアコンのセット温度を上げて栽培室温度を上昇させると、チップバーンが発生した。
 サーキュレーターによる空気循環は同じであった。

2.原因は何であったのか
(1)日長時間の延長で栽培環境が変化する。
1)光量が増えるので、成長が早まる。
2)蛍光灯照射時間が延びるので、発熱量も増えて、栽培室温度が高くなる。
3)栽培室温度に連動する養液温度も高くなる。
養液温度が高くなると、生育は促進される。しかし、高すぎると養水分吸収能低下、特にカルシウムの吸収低下につながる。
根の呼吸量が増大し、溶存酸素量が低下するので、根が酸素欠乏に陥りやすい。
(2)エアコンの設定温度をあげることで、栽培環境が変化する。
1)葉温が上昇する。レタスは冷涼性(暑さに弱く、寒さにやや強い)野菜で、生育適温は15~20℃、最高温度は25℃と言われている。
2)葉温は葉からの蒸散潜熱によって低下し、通路側の温度近くまでなる。
  葉温が上がり、成長が早くなった。
3)生命活動は根本的には細胞内の化学反応であり、温度で成長が左右される。
一般的に化学反応は、常温付近で温度が10 ℃上がると反応速度は2~3 倍上昇する。葉温が1℃上昇すると、計算上1.2倍成長が早くなることになる。
(3)キャビテーションが生じ、養液供給量が減少した。
(参照 第3章11.キャビテーション)
  植物の茎の導管の温度は気温によって変動し、温度が上昇すれば気体(泡)が生じやすくなる。この泡が導管(直径は0.6 mm 以下)で発生し、導管の直径より大きくなれば、養水分の移動ができなくなる。

3.対策方法と目標到達点
《目標到達点:チップバーン発生を10%程度に抑える。》
(1)栽培室温度の急速な上昇を避ける。
  栽培室湿度を上昇させないように、エアコンの設定を行う。
(2)日長条件を延ばす場合は、エアコンの設定と連動させ、急速な温度上昇を招かないよ
うに調節する。
(3)二酸化炭素濃度が低下しないように、ドアの開閉は速やかにおこなう。