事例10:チップバーン発生や生育に発生が生じた

1.何が起こったのか

  収穫品は同一栽培日数の野菜を収穫するのが基本である。同じ照度条件、温度条件、湿度条件で栽培しているが、チップバーン発生率や生育に差が生じた。

  栽培パネルは複数の栽培ベンチで栽培され、収穫量にあわせた栽培棚で栽培される。

 1)栽培ベンチによりチップバーン発生率や生育に差が生じた。

2)収穫パネルは1段に10枚以上載せられるが、奥側と手前側で発生率に差が生じた。

 3)同じ栽培日数で、収穫日が1日違ってもチップバーン発生率に差がある。

 4)春夏秋冬で差が生じた。

 

2.原因は何であったのか

 栽培条件をエアコンやサーキュレーターで管理しているが、マクロでみれば同一でもミクロで見れば栽培条件は同じではない。

(1)照度条件(参照 第3章 4.3 照度分布 <データ>)

  栽培ベッドの通路側と奥側では、奥側で約10%高くなる。反射シートの設置の有無での差が大きい。

(2)栽培温度・湿度にバラツキがある。

(参照 第3章 15.栽培室内の湿度・温度のバラツキの測定)

  1)作業員の移動により変化する。短時間で生じ、またいつ測定したかで違いが生じる。

  2)ソックダクト方式のエアコン使用している。栽培ベンチ間のソックダクトが冷却モードなのか送風モードなのかにより、温度も湿度も差が生じる。

3)各栽培ベッド空間の温度を一定にする。

(3)サーキュレーターを設置しても、風の流れは均一にならない。

  風速0.2m/sec以上あれば十分だが、簡易測定器では測定が難しい。

 エアコンからの空気の吹き出しと、サーキュレーターで均一化を図る。

  <ソックダクト方式>

全体を均一に冷却するのに適している。冷気が栽培室内の通路部分の天井から均一に落下し、蛍光管により温められた暖気は上昇する。上下の空気循環が生じ、気温と養液温度の差は少なくなる。室内機から直接排気する方式では、栽培室全体を均一な温度・湿度にすることは難しい。

4)温度(葉温)が高いと、生育が早くなる。

  蒸散量に違いがあると、蒸発潜熱による葉温は低下に差が生じる。

  空気の流れが少ないと蒸散量が少なくなり、また葉温が高いまま維持される。

その結果、チップバーンは多くなる。

(5)二酸化炭素濃度に差が生じる。栽培ベッド各段に配管されたチューブから二酸化炭素

  を供給するが、空気より重い為に下に流れる。

(6)定植する苗の大きさにバラツキがあった。大きな苗の横に小さな苗を植えると、大きな苗は光を受けてますます大きくなり、小さな苗は日影になり、生育が遅れて小さい葉になった。

 

3.対策方法と目標到達点

《目標到達点:チップバーン発生を10%程度に抑える。》

(1)照度条件を同じにする為、白色枠を取り付けたうえ、栽培ベッド天面と通路側に反射シートを設置する。照度の均一化を図る。

(2)温度・湿度を可能な限り均一にする。

(3)サーキュレーターの送風角度を検討し、空気の流れを出来るだけ均一にする。

   なお、プラスチック製の荷造りひもを裂いて栽培ベッドに取り付けると、わずかな風の動きも確認することが出き、可視化される。

写真2-3 風の状態を確認する目視用のひも  写真2-4 二酸化炭素供給チューブ

(4)二酸化炭素

1)二酸化炭素はチューブを通して供給される。濃度管理機で1,000ppmになるようにする。

2)送風し空気を撹拌する。