8.人工光源は光質をコントロールできる。

8.人工光源は光質をコントロールできる。

 光は発芽や開花、茎の伸長、葉の展開作用等の形態形式に作用する。青色光は生殖成長に関与して抑制ぎみの成長を、赤色光は栄養成長に関与し成長ぎみの傾向を示す。

LEDは光質をコントロールでき、植物の成長を早める事が出来るといわる。しかし、必ずしも品位が良くなるわけでは無い。

 

8.1 完全人工光型植物工場の光源

完全人工光型植物工場用の人工光源は高圧ナトリウムランプ、3波長型蛍光灯、発光ダイオード(LED)、外部電極型蛍光管(EEFL)、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、ハイブリッド電極蛍光管(HEFL)等。

(1)2014年の時点では3波長型蛍光灯が優れているが、将来はLEDが有望である。

(2)3波長型蛍光灯が優れている点は、圧倒的に安価なことである。完全人工光型植物工場にとって設備費用はばく大であり、設備費用を如何に抑えるかが事業としてのポイントになる。また、青色、緑色、赤色の3波長であり光合成にとって、光質も良好である。

 

8.2 緑色光は光合成に役立つ

光合成に利用できるのは青色光と赤色光であり緑色光は利用されないと言われるが、緑色光も光合成に利用されている。

(1)吸収率:赤色光や青色光:約90%、緑色光:70~80%で、その差は大きくない。

(2)強光下で光飽和に達した状況で赤色光を加えると、光飽和に達したクロロフィルに吸収されるが、そのエネルギーのほとんどが熱として散逸される。              強光で効率よく光合成を駆動するのは緑色光である。森林などで葉が重なりあう場合を考えると、緑色光は葉を透過して影になっている葉に届き、光合成を行う。        自然環境の風や光は絶えず揺らいでおり、ギャップが出来て光が当たり光エネルギーを利用できる方が全体最適に適っている。植物の適応戦略と考える。

(3)エネルギー変更効率(消費電力の内)

1)蛍光灯:①可視光約20%    ②赤外線30%  ③熱50%

2)LED:①可視光約30~40%  ②赤外線 0%   ③熱60~70%           LED素子部で直接熱が発生する。そのため、冷却装置が必要になる。

 

8.3 青色光は気孔を開口する。

(1)孔辺細胞に青色光が照射させると、ATPのエネルギーを利用して水素イオンを輸送する細胞膜ポンプが活性化される。水素イオンを細胞外に能動輸送することにより、膜電位が過分極し、ついで、同じく細胞膜にあるカリウムチャネルが過分極に応答して開き、孔辺細胞にカリウムイオンが取り込まれる。孔辺細胞の浸透圧が高まり、水が吸収され孔辺細胞の体積が増え、気孔が開口する。

(2)リーフレタスでは青色光下で、葉柄長の割合が著しく小さい。葉柄を短く太くして葉身を立ち上がらせ、上方からの効率良い受光を可能にした。

 

8.4 LED光と蛍光灯

(1)LED光と蛍光灯との比較では、LED光の方が「ねじれ葉」が発生し易い。         緑色光を含まない場合、葉と葉の重なりが生じると、青色・赤色光は上面の葉がほとんど吸収され下面に位置する葉には届き難くなり、光合成速度が遅れて成長に差を生じる。  一方、蛍光灯には緑色光が含まれるため、緑色光は下面の葉にも届き、光合成が行われる。サラダ菜のようなロゼット形状(根出葉が地面に放射状に広がり、バラの花の形を呈するもの)であれば、各株の受光条件はほぼ同じとなりバラツキは少なくなる。リーフレタスの様に葉が大きく伸びるものは葉の重なりが多くなり、バラツキを生じ易い。

(2)LEDは配光性が狭く、乱反射させるには不利となる。LED光の栽培ベッドでは、乱反射させる反射板か反射シートを取り付け方が、生育のバラツキを防ぎやすい。