4.アオコ管理

4.アオコ管理

  アオコ発生は培養液に薬剤等による異常が無いことの指標になっている。しかし、発生量が多いと培養液をアルカリ側にシフトさせ、発生する酸性多糖類が根の周辺にまとわりつき、生育障害につながる。アオコが大量に発生したら、養液更新する事が現実的な対応である。なお、完全人工光型植物工場製野菜でアオコ発生による食中毒の発生は確認されていないが、マイナスリスクとして管理する必要がある。

 

4.1 養液はpH7未満で管理する。

植物の細胞伸長については古くから、微酸性であることが必要と言われている。細胞壁はpH5~6の微酸性が好ましい。アルカリ性では根の伸長が阻害される。オオムギの様にアルカリでも根を伸長する品種もあるが、レタス類はアルカリになると根の先端部(1㎜程度)が茶色に変色し、根にダメージを受ける。

 

4.2 藻(アオコ)が発生するとアルカリ性になりやすい。

(1)養液のpHはマイナスイオンのNO3-とプラスイオンのK+、Ca+、Mg+のイオン数で決まる。藻によりNO3-が吸収されると、プラスイオンが残るので、「電気的中性の原理」からプラスイオンの[H+]が減り、pHを押し上げアルカリになる。

(2)アルカリ性で養液中のリン酸塩とカルシウムが結合して不溶化し、析出してくる。養液の成分バランスが変わる。またアルカリになると根はダメージを受けて生育に影響する。

(3)播種および育苗の段階はウレタンに播種したまま生育するため、藻が発生しやすい。 pH6.8以上になった場合、養液を交換する。

 

4.3 藻(アオコ)の大量に発生で、生育に悪影響が生じる。

  根の表面や先端部から不溶性の粘液物質(ムシゲル)が分泌される。酸性多糖類、有機酸、アミノ酸、酵素などで構成されている。

水中根の周辺を粘液物質が覆い、バイオフィルムを形成してくると、養分や酸素等の吸収を妨げ、葉の成長が遅れる。また、根の褐変が進み、壊死状態になる根ものもある。

 

4.4 藻(アオコ)にはマイクロシスチン等の毒が報告されている。

(1)アオコとは、微細藻類(主に浮遊性ラン藻、植物プランクトン)が大発生し、水面を覆い尽くす状態、およびその藻類を指す。

粒子状の藻体がただよって水面に青緑色の粉をまいたように見えることから、「青粉(アオコ)」と呼ばれるようになったと考えられる。

(2)湖沼では富栄養化になると発生するが、養液栽培では富栄養化状態で栽培し、光を照射しているので、育苗期間の藻の発生は避けられない。養液更新が対策となる。

(3)アオコは微粒子状の藻体が、水中に浮遊し濁すような状態で繁殖する。専用育苗装置では養液タンク内の養液が緑色に変化してくる。

(4) アオコはアオミドロと混同して間違われることがあるが別物であり、アオミドロは綿状の藻体を作り、さほど水を濁すことなく繁殖する。なお、アオミドロにはアオコのような毒性は報告されていない。

写真2-1 アオコ発生の苗 

 

(注)アオコにはミクロキスティスの他にアナベナという種類が混在することもある。ラン藻という種類で、細菌に近い原始的な生物である。                  アオコはカビ臭の発生、浄水過程でのろ過障害などの問題を引き起こすとともに、アオコを形成するラン藻の一部が毒素を生産する。この毒素を含んだ水を飲むことによる馬や牛といった大型動物の死亡事件が世界各地で発生し、問題となった。1996年2月ブラジルでアオコが産生する毒の一つであるマイクロシスチンに汚染された水を透析に使用したことが原因で、透析患者50人が急性肝不全で死亡する事件が発生した。                                     世界保健機関は1998年3月、マイクロシスチンの飲料水中の暫定ガイドライン値(0.001 mg/l)を設定した。

(愛知県衛生研究所衛生化学部生活科学研究室のホームペ-ジより )