事例4:栽培室温度を高めたら、チップバーンが多発した。

1.何が起こったのか

  収穫重量を増やすために栽培室温度を高めたら、チップバーンが多発した。

(栽培条件)栽培室温度(エアコン設定)を20℃から24℃に上げた。

光強度が光飽和点以下(照度約20000ルクス以上、光量子約300μmol m-2 s

栽培室湿度(通度側が65~75%以上、栽培ベッドと茎部の間が80~85%)

 

2.原因は何であったのか

(1)栽培温度が高いと成長が早くなる。

生命活動は根本的には細胞内の化学反応であり、温度で成長が左右される。

一般的に化学反応は、常温付近で温度が10 ℃上がると反応速度は2~3 倍上昇する。葉温が1℃上昇すると、計算上1.2倍成長が早くなることになる。

(2)成長速度が速いと細胞中のカルシウム不足になりやすい。カルシウムの移動葉遅いので、カルシウムは上の葉や先端部までは届き難い。葉の成長が早いと、葉先端部への供給量が少なくなる。成長速度の速い収穫期にチップバーンの発生が多くなる。

   人間に例えてみれば、中学生の時期に起きやすい成長痛である。急速に成長するため、骨の成長に必要なカルシウムの供給が間に合わず、成長痛が起こる。

(3)栽培室温度が高くなると、養液温度も高くなる。その結果、根からの養水分の吸収が低下し、カルシウムの吸収も低下する。

(4)温度上昇で細胞壁の隙間を通過し難くなる、すなわち養水分の移動がし難くなった。

(参考:第3章26 水の温度の特異性)

 

3.対策方法と目標到達点

《目標到達点:チップバーン発生を10%程度に抑える。》

(1)葉中のカルシウム濃度を増やす。

   養液中のカルシウム濃度を高め、風を送る。

(2)露地栽培では風と蒸散による蒸発潜熱で、葉温は気温とほぼ同じなると考えられる。人工光型植物工場では、蒸散の蒸発潜熱により葉温は低下する。

<通路側の温度20℃⇒明期の栽培ベッド:24±2℃⇒葉温:約20℃>

(3)葉に風を送る。蒸発潜熱により、葉温は25℃以下に下げる。また、二酸化炭素の供給を増やすことになる。

(4)経験的に栽培室温度が28℃になると、背丈が伸び、大きくなるが軟弱となる、

(5)養液に使用する水を、冷却する。