1.6 栽培室の二酸化炭素濃度
(1)最適二酸化炭素濃度は定めっていないが、経験則として1,000ppmで管理している。
二酸化炭素は光合成暗反応の基質であり、光合成能力を高めている。葉菜類で炭酸ガスを750~900ppmの施用で50~100%の増収になる。
(2)二酸化炭素濃度と光合成
二酸化炭素濃度が低い場合は、光の強さにかかわらず光合成速度は等しく、二酸化炭素濃度に比例して増加する。この条件では,二酸化炭素濃度が光合成の限定要因になっている。二酸化炭素濃度が増加すると、光の強さによって光合成速度に差が生じてきて,約2,000ppmに達するとこれ以上二酸化炭素濃度が増加しても光合成速度は増加せず,この条件では光の強さが限定要因になる。
1)1億年前の大気の二酸化炭素濃度は現在の約4倍高く、約1,500ppmであり、その後に二酸化炭素濃度は低下し、西暦1800年には250ppmになったと言われている。現在は約400ppmである。
2)キュウリやレタスが2,000ppmのような高二酸化炭素濃度の雰囲気中に長期間置かれた場合、葉にデンプンが蓄積し光合成速度は減少する。デンプンの蓄積は葉緑体の形を大きく変形させ、葉緑体の細胞膜からの距離が大きくなる。その結果、二酸化炭素が細胞間隔から細胞壁⇒細胞膜⇒Rubiscoの活性部位に移動する距離が大きくなり、CO2透過の抵抗が大きくなる。
<畑 直樹等 閉鎖型植物物工場における連続光の利用(第4報)岡山大学農学部学術報告 VOL.101,49-64(2012)>
3)葉菜類で二酸化炭素を750~900ppmの施用で50~100%の増収になる。
二酸化炭素濃度が高い方が、葉中の炭水化物量も増える。
<岐阜大学 応用生物科学部 園芸学研究室の福井博一教授の公式個人サイト
施設園芸学の講義内容 http://www1.gifu-u.ac.jp/~fukui/04-4-1.htm>
1.7 酸素・養液の根部への供給
養液の根部への酸素・養液の供給が十分あると、生育が早くなる。
育苗段階での硝酸塩濃度は、光合成系タンパク質(ルビスコ)量を増やす。ルビスコはタンパク質であり窒素が基質となるので、NO3-濃度が高い方が、ルビスコ量が増えることになる。NO3-濃度を300ppm以上とした理由であり、経験則である。
(1)高栄養で育苗し、段階的に硝酸塩濃度を低める養液管理を行っている。
1)養液中の硝酸塩濃度を高い状態で育苗し、苗の成長を促進させる。 2)苗の段階で、窒素含量が多いと生育が良いことは経験則である。窒素濃度高めると葉の
色は濃くなり成長速度は大きい。窒素が不足すると葉の色は薄くなり成長速度は小さい。光合成に必要なクロロフィル量が少なく、光合成に必要なタンパク質も少なくなる。
3)初生葉の窒素量と光合成速度には強い正の相関があり、窒素供給量が減少すると葉の窒素含量が低下する。これに伴い光合成タンパク質量が減少し、とりわけルビスコ(炭酸固定酵素)量が減少する。
(2)根面境界相の養分供給低下が防げる。根が養分を吸収すると養液中の養液拡散は極めて低いため、根近傍に養分濃度の低い相が出来る。酸素の場合、静水中の拡散係数は、空気中の約1万分の1である。根の表面への養分供給量が吸収量と関連し、養水分の吸収を促進させることで収量を高めることが出来る。
(3)噴霧水耕やNFT水耕では根の表面の養水分は絶えず入れ替わっており、根面境界相の養分濃度低下は少ない。
(4)湛液水耕は培養液の流れで、根部へ十分な酸素や養液を供給する。