第2章 栽培管理・制御技術の各論

完全人工光型植物工場の野菜栽培は、露地栽培より成長が早いのが特長の一つである。
完全人工光型植物工場の栽培条件である温度および湿度環境、日長時間、炭酸ガス濃度、養液等を最適環境でコントロールする事が出来る。その結果、噴霧水耕、湛液水耕、NFTなど養液栽培の方式は違っても、植物工場での生育期間は露地栽培に比べて早くなっている。その為には栽培管理がなされている事がその前提条件となる。
植物で光エネルギー変換効率を蓄積された有機物量(バイオマス)として実測すると、環境をコントロールされた実験室の条件においても最大5%程度と報告されている。    人の管理下にある農地では最大1%程度であり、通常の野外条件では0.1%を下回ると言われている。完全人工光型植物工場の生産性は、計算上では約5倍である。

1.生育を早める環境・栽培管理
1.1 光環境光条件
 光環境は完全人工光型植物工場と露地栽培では異なる。
露地栽培では太陽光は絶えず変動し、光飽和点以上の強光にも曇りの日にも、適応するシステムを有している。一方完全人工光型植物工場では、光源のルーメン(光束)数は同じであり、光量のバラツキは光源と葉の距離や、栽培ベッド天面や側面の反射状態に起因する。
(1)露地では晴天と曇りの日では、光量に大きな差が生じる。1日の中でも大きく変動する。完全人工光型植物工場の光強度は太陽光強度に比べて弱いが、積算光量は必ずしも少ないとは言えない。植物が受けた積算光量の増加に伴って光合成が増加し生育が促進する。
(2)青色光が葉柄長の割合を小さくし徒長を防止する。また、気孔を開口させ光合成能力を高める。使用している3波長型蛍光灯は赤色光や緑色光と青色光照射し、青色光量は多い。
(3)半陰性植物のレタスは、完全人工光型植物工場で通常照射している10,000~20,000ルクスで光飽和することなく、光合成の明反応(光化学系)で余剰エネルギーが生じる事は少ない。余剰エネルギーが活性酸素生成を引き起こすことも少ない。活性酸素が光化学系を破壊もしくは修復を阻害する等の結果、枯れや、クロロフィルの破壊による変色等の光阻害を引き起こすが、それも少ない。ただし、連続照射時間が長いと光阻害を引き起こす。
(4)レタスの光飽和点は25,000ルクスである。
光飽和点に近い照度の場合、明反応で作られるエネルギーが暗反応(炭素同化反応)で消費できず、光エネルギーが過剰の活性酸素を作り出す事がある。活性酸素が暗反応で働く酵素を破壊もしくは修復を阻害して、枯れや、光阻害を引き起こす。          その場合は日長時間の短縮で光合成のエネルギー生産を減少させ、風を送るなどして二酸化炭素の供給を増やし、エネルギーバランスを取る。
(5)明暗周期を設定でき、チップバーン対策が取りやすい。
連続16~18時間の日長(蛍光灯照射)を行うと、チップバーンが発生しやすい。    明暗周期を短くすることで、葉先端部へのカルシウム供給をスムーズに行え、細胞膨圧を高めずに済む。 例えば、レタス類では、明期6時間+暗期2時間の明暗周期か、明期3時間+暗期3時間の明暗周期でチップバーン対策になる。                      高照度と低照度では明暗周期を変える必要があり、各完全人工光型植物工場で決めていく。
(6)使用している3波長型蛍光灯から照射される緑色光も、光合成に利用されている。   (吸収率)赤色光や青色光:約90%、緑色光:70~80% その差は小さい。