温度管理・風と湿度

1.4 温度管理
レタスの最適温度は15~20℃と言われているが、それよりも高めの20~24℃で維持する。栽培室温度が20℃の場合、明期の蛍光灯下では24から26℃になるが、葉温は蒸発潜熱により20℃前後に下がり、光合成速度の高い状態で維持することが可能になる。生育のバラツキを少なくするため、各栽培ベッド空間の温度を一定にする。栽培室の階高が高いと床面付近と天井近くでは、温度に差が生じやすい。
(1)葉温が約20~40℃で炭酸固定速度は最大になる。
1)40℃前後以上では光合成の暗反応による二酸化炭素の固定は遅く、光阻害などが生じる。
2)低温では二酸化炭素固定能力が低く、成長が遅くなる。明反応で得たエネルギー(温度非依存)が過剰になり易い。光合成は光を吸収し化学エネルギーに変換する明反応と、そのエネルギーを利用して二酸化炭素を固定する暗反応から成り立っている。
3)15℃の低温栽培では二酸化炭素の固定に利用し切れない過剰の化学エネルギーがたまり、この状態が続けば光阻害が起き、更にチップバーンになる。
5℃以下の低温栽培でCO2固定能力が低く、明反応で得たエネルギーが過剰となる。
(2)呼吸も酵素反応なので温度依存性があり、二酸化炭素交換速度は温度に影響を受ける。
(3)栽培温度を20~24℃と高めに設定することで、細胞膜の脂質二重層の流動性を高め、イオンの透過性を高めることが出来る。
(4)レタスの花芽形成の主要要因は温度である。25℃以上の高温に一定期間成育すると、花芽ができる。花芽が着くと養分が根や茎葉にいくよりも花芽に集積し、根や茎葉に養分配分が少なくなり、品質低下と露地栽培より小さな株になる。レタスは長日植物であり日長時間が長いと花芽形成の要因になるが、完全人工光型植物工場では経験的に、20~24℃の環境下で5~6週間の成育期間では花芽形成は見られない。
(5)栽培室温度をやや高めに設定すると、成長は早くなり背丈のある株になる。
しかし、チップバーンの発生も多くなりやすいので、栽培室の実温から、エアコンの設定温度を決める。
(6)蛍光管の表面温度は40~70℃であるが、葉面までの距離および蒸散効果等から、葉温の温度上昇は少ない。しかし、蛍光管に接触した葉の温度が40℃以上となると、明反応でエネルギーが化学エネルギー(ATPやNADPH)に変換されるが、化学エネルギーは利用されないため、過剰エネルギーは活性酸素を作り出してしまう。
(7)植物にとって活性酸素は必要な物質であるが、悪い作用もある。葉緑素を分解し、細方内の遺伝子に変化を起こす。結果として細胞を壊死させ、刃の部分的変色するなどの「はやけ」が起きることになる。
(8)レタスの生育適温は外葉が20℃前後、根は約15℃と言われている。
栽培温度を20~24℃と高めに設定することで、細胞膜の脂質二重層の流動性を高め、イオンの透過性を高めることが出来る。
(9)養液温度が管理できる。
 農林総合研究センターの報告によれば、「夏採りホウレン草」の養液栽培は、養液温度がハウス内気温と同程度に上昇するため、養液を冷却しなければ良品質の栽培は不可能とされている。養液温を22℃以下(限界値24℃以下)まで冷却すれば栽培可能である。
(10)リーフレタス栽培で、噴霧水耕栽培で養液温度が20~22℃の場合、葉中硝酸塩濃度は低く、養液温度が25℃以上になると、高いまま維持される事を経験している。       養液温度を栽培室温度より低く、さらに22℃以下にすることが可能である。
(11)露地栽培では気温は不均一であり、高温や低温状態が生じ、光合成速度を高いまま維持する事は難しい。温度や光条件によりバランスが崩れる。

1.5 風と湿度
二酸化炭素と養水分の供給を高めるためには、湿度を下げ、風を送るとよい。
風速は20cm/s~50cm/s程度とする。この数値は経験則でもある。無風の場所で生じるチップバーンなどの障害も、わずかな風で発生を減じることができた。
(1)葉からの養水分蒸散に伴い根から養水分が吸収される。ストローで水を吸う現象と同じ。
(2)湿度が高いと、水蒸気(水)が多く気孔から通過するため、二酸化炭素の通過は遅れることになる。水蒸気や窒素、酸素よりも、二酸化炭素は気孔を通過し難い。
(3)気孔の二酸化炭素の入り易さと、水蒸気の入りやすさ比例関係にある。水蒸気の方が二酸化炭素より1.6倍気孔を通過しやすい。
(4)微風でも、気孔近傍の空気を入れ替えるので、二酸化炭素の供給を増やすことになる。