完全人口光型植物工場の管理マニュアル 第1回 はじめに

はじめに

完全人工光型植物工場は、内部環境を制御した閉鎖的な空間で植物を計画的に生産するシステムです。人工光を光源として植物を生育し、培養液や温度・湿度、二酸化炭素等を制御する事で、植物の周年安定生産が可能になると言われます。
 しかし、完全人工光型植物工場は「栽培マニュアル」だけでは周年安定生産は難しいのが現状です。現場に即した『栽培管理マニュアル』が必要になってきます。
本著『管理マニュアル』は周年安定生産と完全人工光型植物工場のユニバーサルデザインを目指して作成しました。

Ⅰ.完全人工光型植物工場のユニバーサルデザイン化の目的
高齢社会の日本において高齢者および障碍者雇用は喫緊の課題であり、高齢者や障碍者が働く職場を創出していく必要があります。さらに、昨今の異常気象などの地球規模での大変動が生じており、安定した農業生産はその重要性が増しています。
完全人工光型植物工場の作業は、①農業経験は不要 ②だれにでも出来る ③肉体的な負担が少ない ④作業環境は温度・湿度とも管理され、屈まない・しゃがまない・重い物は持たない等の特長があり、高齢者・障碍者の働く場として相応しい作業条件といえます。      さらに、作業そのものがユニバーサルデザイン化されていれば、最小限のヒューマンエラーに留める事が出来るようになってきます。                            ユニバーサルデザイン化することで管理が容易になり、周年安定生産を図れるので、生産性を高める事に繋がり、経営を安定させる事が出来るようになります。

Ⅱ.光合成の理解
 光合成反応は光エネルギーと水、二酸化炭素から、糖と酸素を作り出すことが本質です。作られた糖が細胞に移動し、呼吸により発生した酸素を利用して化学エネルギーを作り、そのエネルギーが代謝などに使われて植物は成長しています。
光合成と呼吸は、反対の反応と言えると考えています。
光合成を理解することで、完全人工光型植物工場の管理・制御が可能になってきます。

Ⅲ.予めお断りしたい事
本著「完全人工光型植物工場の栽培マニュアル」は、「科学的に正しいかどうか」ではなく、植物栽培に門外   漢であった筆者が、完全人工光型植物工場を運営し栽培現場で生じた問題点や疑問に、「どの様に考えたらつじつまが合うのか」という「自分が納得いく説明」をまとめたもの、『栽培現場での疑問⇒知識入手⇒解答の仮説設定⇒確認作業⇒説明文書作成』を繰り返して、栽培マニュアル等を作成した。                                  『学者』に求められる科学的な厳密性は横に置き、疑問点に対して「この様に考えたら、説明しやすい納得がいく」というもので、つじつまを合わせる考え方である。
すなわち、学術書ではないということです。
                               平成27年11月18日
                                   大 山 敏 雄