生産性の向上とチップバーン

4.1 チップバーンを防ぎながら生産性を高める。
完全人工光型植物工場ではチップバーン発生を最小限にして、成長を早める栽培方法を採用する。
図1-6 チップバーンと生産性
レタス栽培で大きな株を求める場合は、光合成効率を高めるか、栽培日数を長くすることである。しかし、チップバーンの発生も多くなる。通常フリルレタスの栽培日数は42日間で約100gに成長するが、150~200gの重量を目指す場合、栽培日数は50日間前後となる。養液濃度・pH、温度、風、飽差等を管理しなければ成り立たない栽培方法となる。
一方、栽培日数を短くすることで、チップバーンの発生リスクを少なくすることが出来る。フリルレタスの一枚の栽培パネルで42日間栽培では、栽培株数を24株とした場合、38日間栽培では32株の栽培数になる。栽培数とトリミング率(廃棄率)の低下により、栽培総重量は同等となる。しかも無駄が少ないので光エネルギー変換効率は高くなり生産性は向上する。

4.2. 生産効率の全体最適にするため、部分最適を寄せ集めてはならない。
(1)単に「光強度を強くする」「二酸化炭素濃度を高める」等の環境管理で、光合成効率が高まる事は無い。各々は部分最適であり、全体最適になるとは限らない。
(2)植物には一番良い環境条件に適応した最適なメカニズム(部分最適)があり、これに光合成効率(生産効率)を下げる調整メカニズムを組み合わせ、生産効率を高める(全体最適)。例えば、葉緑体は強光下、弱光下での環境に応じて、それぞれに応じて細胞壁側や細胞面上へ葉緑体が移動する。葉緑体を細胞面上に並べる事が、光を光エネルギー変換の最適メカニズムと言える。                               しかし、この強光条件で二酸化炭素供給が少ないと暗反応による炭水化物生産量が少なくなり光エネルギー消費が抑えられる。また、風が無いと熱放散も少なくなる。      その結果、光エネルギーが余剰となり活性酸素を生成して障害を生じる。ますます炭水化物生産が少なくなり光阻害となる。部分最適の「葉緑体を細胞面上に並べる事」は全体最適にならないことになる。全体最適にするため、色素量の調整、色素タンパク質複合体のバランスの調整、電子伝達の調整等のメカニズムを発達させている。それらのシステムは光合成効率を下げる環境応答である。