転流

3.転流
呼吸作用で糖と酸素がなければ、ATPを生産が出来ない。酵素の原料となる硝酸態窒素や生育の必須成分が無ければ成長は進まない。成長の原料を供給する転流が必要となる。
<糖の合成:カルビン回路と転流>

図1-4 カルビン回路での糖の合成と転流
<図の説明>
1)カルビン回路は暗反応とも呼ばれ、二酸化炭素の固定を行う炭素同化反応である。   2)澱粉は葉緑体内で合成される。澱粉は高分子(グルコースが連なったもの)であるた
  め、葉緑体包膜からそのままの形で出ることはない。                                3)グルコースやフラクトースの単糖は還元末端を持つので、化学的に不安定である。
   還元末端を持たない化学的に安定なショ糖に変換される。               4)ショ糖は一時的な貯蔵糖として、液胞に貯蔵されると同時に移動糖として器官間分配
  の役割も持つ。転流される。

3.1 転流による移動
(1)転流物質は、物質の豊富な部分から他の部分へ上昇または下降して起こる。
水や無機塩類は木部導管を通って上昇し、光合成産物は葉⇒茎⇒根や生長点及び貯蔵器官へ転流する。同化産物などの糖や有機物質は篩管を通って上下に転流する。
(2)転流の速度と機構 
1)細胞間隙ネットワークを通じて移動する。葉の柵状組織など。
2)葉からの同化産物の転流量は、昼間は大きく夜は小さい。昼間は光合成の同化産物が 葉に蓄積し、他の部分との間に同化産物の濃度勾配が夜間に比べて大きいと考えられる。
葉に近い篩管細胞の細胞液ほど浸透圧が高く、根に近い篩管細胞の細胞液ほど浸透圧が
低く、根部へ糖類が供給される。
3)温度の影響(根部への転流)
夜間の葉の重量の減少は同化産物の転流と葉の呼吸による。転流の最適温度は20~30℃で、30℃を超すと転流速度は低下する。しかし,呼吸速度は温度の上昇とともに増大する。温度の低いとき、根部の呼吸による糖の消費は小さいが、根への同化産物の転流が大きいで、糖が根に蓄積し、貯蔵物質となる。高温のときは葉でも根でも呼吸が大きく、葉からの同化産物の転流は小さくなる。

3.2 養水分の移動経路
図1-5 養水分の移動経路
(説明)離生細胞間隙は隣接する細胞の接着が離れて形成される。
破生細胞間隙は空隙になる部分の細胞が細胞死により除去されることで形成される。