植物の成長

2.2 植物の成長
(1)成長の制限要因は光と温度、二酸化炭素、肥料(栄養素)養液である。それらの最適な組み合わせを管理することで、成育が早くなる。
(2)植物の成長の基礎は光合成であり、光合成により作られた糖と酸素が各細胞に運ばれる。  各細胞組織では糖と酸素により呼吸を行い、アデノシン三リン酸(ATP)を生産し、生反応エネルギーとして使用している。
(3)光合成生産物を増やすには、バランスの良い肥料が重要となる。光量は多い方が生産量も多くなるが、光阻害を招くことにもなる。それを防ぐには高濃度の二酸化炭素が必要となるが、それに応じて、窒素、リン、カリ、鉄などの要求量も増えてくる。
(4)各必須元素は基材として使われる。
1)二酸化炭素:糖  2)窒素:ルビスコ等の酵素(タンパク質) 
3)リン:ATPの成分 4)カリウム:補酵素 
5)カルシウム:細胞壁 6)鉄:酸素を運び蓄える   等
(5)発芽・発根の栽培環境では温度、水、酸素が三要因となる。
環境から水分と酸素が供給されると、種子に蓄えられた栄養(糖)ATPを生産し、発芽・発根を開始する。
暗所で栽培すると光合成が行われないので、種子中の栄養を利用して成長し、いわゆる「もやし」状態になる。発芽後は葉が光を受けて光合成を開始し、成長していく。

2.3 アデノシン三リン酸(ATP)
光合成により作られた糖と酸素が各細胞に運ばれ、各細胞組織では糖と酸素から呼吸によりアデノシン三リン酸(ATP)を生産する。このATPを利用して根や葉の気孔から吸収した物質を代謝・合成し、植物は生長する。生体内で使われるエネルギーの(ATP)は、生体内に広く分布し、エネルギーの放出・貯蔵、あるいは物質の代謝・合成の重要な役目を果たしているので、その重要性から「生体のエネルギー通貨」と形容されている。
すべての植物、動物はATPを直接利用している。
(1)生体反応におけるエネルギーはATPのもつ自由エネルギーを使用している。
(2)ATPから取得されるエネルギーはあらゆる生命活動のエネルギー源として利用されるが、ATPは貯蔵されない。そのために生命維持のためにはATPの産生は常に休みななく行われなければならない。通常の細胞ではATPは1分以内に消費される。すなわち、ATP産生が滞れば細胞は1分以内に死に至るということを意味する。
2.4 呼吸とATP生産
呼吸の本質は生育を支える代謝反応へのエネルギーの供給にあり、糖や脂質等の物質を分解して、ATPという化学エネルギーに変換することにある。
(1)光合成と呼吸はほぼ反対の生体反応である。
1)光合成:葉緑体で行っている光合成反応は独立した二段構えの生化学反応である。
①光エネルギーを使って水を原料に、酸素とATPとNADHPをつくる。
②このエネルギーを使って二酸化炭素から糖が作られる。
2)呼吸:細胞内では、呼吸により糖を分解しATPと二酸化炭素を作り出す。
3)好気的呼吸(酸素呼吸)では、1分子ブドウ糖が完全酸化されると38分子のATPが作られる。
4)嫌気呼吸(無酸素呼吸)では正常な生育に必要なエネルギーを得ることができない。
無酸素状態ではクエン酸回路がまわらなく、この回路へ投入される糖代謝物のピルビ
ンは有害物質である。ピルビン酸の蓄積は細胞に有害で、解毒するために還元してより無毒な乳酸や、さらにはエタノールへ変換する。還元はエネルギーを消費する。
植物で、乳酸発酵も無酸素の初期には起こるが、多くの場合エタノール発酵となる。
反応過程は<1ブドウ糖+6酸素+2リン酸=2エタノール+2二酸化炭素+2ATP>。 ブドウ糖は2分子のエタノールと2分子ATP(化学エネルギー)へと変換される。
(2)細胞間隙ネットワーク : 植物は組織の中に必ず気孔を通して大気に連なっている細胞間隙ネットワークを持つ。酸素も二酸化炭素も<気孔⇒隙間⇒細胞>の細胞間隙ネットワークを経由して運ばれる。
(3)ATPの問題点
植物は光合成によってATPを合成することができるので、それとは別に呼吸によってATPを作る必要はなさそうに考えられる。しかし、問題点が2つある。
1)第一の問題点
①光合成により葉緑体で作られたATPを細胞質で使う場合、ATPの形で葉緑体から細胞質に運び出されるのはわずかで、エネルギーは糖の形で細胞質に運び出される。なお、葉緑体の内部では、光化学反応で必要なATPを直接合成できる。
②葉緑体以外の細胞質や細胞内器官(細胞の内部で特に分化した形態や機能を持つ構造の総称)、さらには別の細胞組織、例えば根ではミトコンドリアがないとATPを得ることが困難になる。
    ATPを必要とする場合には、糖と酸素から、解糖系を経てミトコンドリアでATPに変換することになる。好気呼吸は嫌気呼吸よりATP生産量は多い。
2)第二の問題点:貯蔵
①光合成ができない夜の間でも、また落葉樹などであれば冬の間でも、生きていくためには一定のエネルギーが必要となる。
②ATPは貯蔵できないので、貯蔵された糖類や澱粉などを呼吸により分解し、ATPを得る。